病院にアートが必要なわけ Hiro ver.

 
どうも。あとめでぃの藤村です。

あとめでぃは医療系メンバーが多いですが、僕は普段建築の設計をしています。医療現場のリアルな声はやはり皆さんに敵いませんが、僕は僕なりに違う視点を持っていると思うので、建築に携わる人が考える病院について、そして病院のこれまでとこれからを少しお話したいと思います。


<病院のイメージ>

普通の人が病院と関わることってあんまりないと思いますけど、人生で一度も行ったことない人はおそらくいないんじゃないかなと思います。今の時代は病院での出産が多いのでほとんどの人が生まれた瞬間は病院にいると思いますし、風邪とか身体の調子が悪い時にお医者さんに診てもらいに行く人が多いと思います。
個人的には高校生の時に怪我をして数週間入院したことがありました。でも僕は病院てあまり好きじゃないです。まず行ったらやたら待たされる。待たされること自体はそこまで嫌じゃないんだけど、病院に来るってことは全員何かしら身体に異常があって、幸せな表情を待合スペースでしてる人なんて周り見渡しても誰もいない。長い時間待つって意味では浦安の某テーマパークだって同じなのに表情が全然違う。それに待合スペースってただ座る場所が用意されているだけでつまらない。診察目的で行く人は病院の中で一番過ごす時間が長いのって待合スペースのはずなのにね。あと入院していた時も楽しくはなかった。ずっと同じ部屋にいなきゃいけないし、誰とも話せないし、やることないし、etc.。でもこういうのが病院(のイメージ)なんですよね。だから病院が好きって人は多くはないと思います。
 

<病院のつくられ方>

それではどうして病院はそうできているんでしょうか。少し建築計画的なお話をさせていただきますと、まず病院とは患者を一般人から隔離するための施設として生まれました。昔々は薬もなければちゃんとした治療法もなかったので、治すというよりは隔離するための施設が必要でした。普通の人のそばに置いておくと病気が広がっちゃうからとりあえず隔離しないといけない。隔離するための施設だから当然患者さんが治療を受けるような環境ではなく、肉体的にも身体的にも心地の良い場所ではなかったと思います。そんなアイデアが起源となっていることを考えると、病院という施設は居心地の良さは二の次でつくられているってことです(もちろん改善され続けてはいますが)。
もうひとつは管理のしやすさ。当然病院で患者の容体が急変した時などにすみやかに対処する必要があります。したがって看護師が全ての病室を見渡せるようにつくられています。このような形式で計画されている建築は他にもあります。それが刑務所です。ここでは看守が囚人を監視するためにこのような建築の形式がとられています。つまり病院は刑務所と同じつくられ方をしている。そう考えると居心地が悪いのも納得できそうな気がします。

●某刑務所航空写真
●某病院航空写真



<病院のこれまでとこれから>

病院が愛されないのには建築計画的な理由だけではないような気がします。人って日常的に接している場所や人に親近感が湧くと思うんです。だから普段行くことがない病院には親近感がわかなくて当然だと思います。これまでの病院は先生がいて僕たちが診てもらいに行く。病気を治せる超能力を持った先生方は(少なくとも僕は)違う世界にいるように感じます。でもこれからの病院の在り方はそれでいいのかなと疑問に思っています。これからは病院に行かなくとも病気の診断や治療ができるようになるので、あまり好きじゃない病院に行く理由はなくなります。そりゃ入院なんてしたくないし、死ぬなら家が良いのは当たり前だと思います。事実最近は高齢化も相まって在宅療養の需要は高まっています。その時病院はどうあるべきか。僕は大きく2つの病院の在り方があると考えています。まずは病院の地域拠点化。病院は一定範囲の中に一つはある施設です。それはつまり地域の中核施設になり得るポテンシャルを持っているということ。例えば街の行事や催し物するとか、ママ友の集まりをできるようにするとか、そうやって普段からいろんな人が出入りする、人々が来やすい街の拠点になれば何かあった時も利用しやすくなって病院の雰囲気も変わるんじゃないかな。もう一つは病院の家化です。前述したように家にいながらにして医療サービスを受けられるようになることは家が病院化すると言えると思います。だから病院ももっと家に近づいたらいいと思います。入院している人からすれば病院は家と同じだと思いますし。病院じゃなくて治療付き住宅もしくは治療付きシェアハウス。そうやって病院を考えると病院のつくりかたも変わってくると思います。医療従事者の在り方も変わるでしょう。AIがもっと発達して症状や身体データから病気を特定するようになったら、お医者さんのやることは減ってきます。その時に必要とされる職能はコンピューターにはできない話を聞いてあげたりすることだと思んですよね。このようにこれからは「普段よく行くから行こうと思う」「あの人に会いに行く」そんな風にもっと市民が親しみやすい病院、白い巨塔じゃなくてドクターコトー診療所的な病院が必要とされると思います。
 
文字が多くなってしまったので、最後にいくつか素敵だと僕が感じた病院をいくつかお見せしようと思います。
 
「チャイルドケモハウス」
 

「サンパウ病院」
建物の様式にも目がいくけれど、何と言っても大きな中庭とたくさんの植物。バルセロナの天気の良さも合わさってとても気持ちの良い空間が広がっています。100年近く前の病院だけど、この中庭の気持ち良さは普遍です。

 
「マギーズセンター」
がん患者のための施設です。イギリスを中心として世界中にこの施設はあります。「美術館のように魅力的であり、教会のようにじっくり考えることができ、病院のように安心でき、家のように帰ってきたいと思える場所。」空間を豊かにすることで、身体だけでなく心も含めて癒してくれる施設です。

 
「さやのもとクリニック」
認知症を主とした診療所。おもしろいのは患者だけではなく、一緒に来た家族も心安らげるような空間をつくろうとしているところ。特に認知症の場合はご家族の負担も大きいと思います。病気と戦っている人だけでなく、病気や病院に関わる人みんなが当事者なんですね。   


 
本当はアートについても話そうと思っていたんですが、長くなってしまいました。とりあえず今回のところはここまでとして、次回アートと人間について話したいと思います。藤村でした。
 
 
 
写真参照元
・ マギーズ東京HP
・ 手塚建築研究所HP
・ 山崎健太郎デザインワークショップHP

artmedi

artとmedicalの世界を1つに。

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